続・設計者のキャリアとは。
引き続き、機械設計者のキャリアについて整理していきます。
前回は、
・機械設計者の仕事は、他分野と比べ工数で測れない領域が広範囲である
・機械設計者なら当然「図面」を描くべきなのに、「お絵描き」止まりのエンジニアが大勢いる
というお話しでした。
具体例を挙げます。
ある機械設計者のスキル面談をするシーン。
あなたはスキルの評価者です。
彼は言います。
「メカ設計なら任せてください!15年やってます!
3D-CADだってバリバリ使えますし!」
なんて頼もしい。経験年数15年ならベテランですね!
…と喜ぶのはまだ早い。簡単なテストをしてみましょう。
こう投げかけます。
ちょっと図面描いてもらって良いですか。
「え?今ですか?」
はい、今です。紙と鉛筆はありますから。
「え、私、CAD以外で図面かいた事なくて…」
そうですか。では、ヒントを出しますね。
このポンチ絵を元に、部品図を作成してください。
何の変哲もない、プレートに穴4つという部品。
制限時間は3分です。
解答例①
よく書けましたね。でもこれはただの絵。
設計者の描く図面ではありません。
解答例②
これが部品図です。
設計者から加工者へ、設計意図を的確に伝えるための書類が、図面です。
「設計意図を的確に伝える図面」を描く能力があることが、機械設計者であるための必須条件です。
この能力、やっかいなことに年数やれば身に付くものでは無いのです。
何千枚描こうとも、考えていなければ蓄積されないのです。
考えて、作図して、加工屋さんから怒鳴られて、また考えて、作図して、出来たものが思い通りに仕上がらなくて、また考えて…と、
「痛い目」に逢いながら身に付いていく能力なのです。
この領域に教科書はない。
さらには、答えも1つではない。ケースバイケースです。
部品毎に与えられる前提が異なるからです。
だからこそ面白いし、AIでは代替できない生身の人間の仕事だと、私は考えます。
次回へ続きます…。